コイルレスの高効率電源としてスイッチトキャパシタ変成器を用いた電源がある。スイッチトキャパシタ電源はキャパシタ間の接続をスイッチで高速に切り換えることによって電圧変換を行う回路で、集積化が難しいトランスやコイルなどの磁性部品を用いないことから、集積化と高効率化を実現する有効な手段の一つである。また、スイッチトキャパシタ電源は磁束の発生が少なく他の信号回路と同一チップ上に電源回路を形成でき、特に回路の薄形化に向いており、超小形にできる。従って、電源回路を含めたシステムオンチップの実現を可能とし、低コスト化が期待できる。 |
従来のスイッチトキャパシタ電源は、その電圧の昇降変換比は、回路構成から決定され、回路変更なしでは容易に変更できない制約をもっていた。従って、種々の入力電圧や出力電圧に対応するためには、その組み合わせの数だけコンバータを準備しておく必要があり、コンバータの低価格化の大きな障害となったいた。 また、複数個のキャパシタを同時に充電または放電させるために、電源投入時には、極めて大きな突入電流が流れる。この大きな突入電流は、回路素子の劣化の原因になり、また、他の装置への悪影響も考えられる。 定常時においても、切り換えのたびに大きなスパイク状の電流が流れ、EMI問題を引き起こす可能性がある。回路構成上も、駆動が難しい非接地のスイッチを多数有するために駆動回路が複雑になるという問題点ももっている。 |
上記のことをふまえて、従来の方式とは全く異なって、n個のキャパシタがスイッチによりリング状に結合される新しい方式のスイッチトキャパシタ電源を考えた。これがリング形スイッチトキャパシタ電源である。 各キャパシタは一度に1個ずつしか充電されないので、スイッチトキャパシタを用いた従来のものと比較して、電源投入時においては突入電流が小さく、定常時においても入力電流のリプルが小さい。また、スイッチの数が少なく、しかもすべて単方向性のものでよく、すべての非接地のスイッチと一端が接地されたスイッチでトーテムポールを形成するのから、スイッチの駆動が容易である。 |